キング・ジョージはドイツが連覇

昨日はアスコット競馬場で夏競馬の頂点とも呼べるキング・ジョージⅥ世クイーン・エリザベス・ステークス King George Ⅵ and Queen Elizabeth S (GⅠ、3歳上、1マイル4ハロン)が行われました。馬場は good to firm 、所により good 。
既に枠順発表でも紹介したように8頭立て。6対4の1番人気に支持されたのはシリュス・デ・ゼーグル Cirrus Des Aigles で、この馬が勝てば史上最年長の7歳馬が制することになります。対して今年は3歳クラシック馬が挑戦、愛ダービーを制したトレーディング・レザー Trading Leather が9対2の2番人気を集め、3歳世代の実力を測る絶好の機会でもありました。

流れを作ったのはエクティハーム Ektihaam 。主戦騎手ハナガンはヨークでの騎乗を優先させたため、ここではデーン・オネール騎乗での逃げ作戦です。これをユニヴァーサル Universal が2番手で追走し、トレーディング・レザーも積極的に3番手追走。
直線、逃げ馬がバテるのを見て後続の有力馬が続々と仕掛け、5番手で待機していたスミオン騎乗のシリュス・デ・ゼーグルもスパートを掛けますが未だ馬が重いのか行き脚は今一つ。本命馬がもがくのを尻目に一気の末脚を爆発させたのが、4番手で先行馬を見ていた4番人気(13対2)のノーヴェリスト Novellist 。何と2着トレーディング・レザーに5馬身差を付ける圧勝でした。4分の3馬身差で後方から3歳の一角ヒルスター Hillstar が追い込み、シリュス・デ・ゼーグルは3馬身離されて4着。
勝ちタイムの2分24秒60は、これまでの記録(ハービンジャー Harbinger の2分26秒78)を2秒以上も更新するレコード・タイム。着差と言い、勝時計と言い、文句の無いチャンピオンに躍り出たことになりましょう。

ノーヴェリストは、ドイツのアンドレアス・ヴォーラー師が管理する4歳馬で、ドイツ調教馬は去年のデインドリーム Danedream (ペーター・シールゲン厩舎)に続き2連覇となります。騎乗したのはジョニー・ムルタ。前走(サン=クルー大賞典)はムーアが乗りましたが、今回ムーアは主戦のスタウト厩舎(3着のヒルスター)を優先しましたから、ムルタが代役となりました。ムルタは2003年のアラムシャー Alamshar 、2007年ディラン・トーマス Dylan Thomas 、2008年のデューク・オブ・マーマレイド Duke of Marmalade に続く4度目のキングジョージ。尤もこのレースはレスター・ピゴットの7勝という記録があり、最多勝騎手には未だ未だ手は届きません。
前走フランスでのGⅠが決してフロックでは無かったことを証明したノーヴェリスト、ここまで10戦して敗戦は2回のみ。無敗で臨んだドイツ・ダービーが2着、続くバーデン大賞は古馬との初対戦で4着でした。これで4連勝、目標はもちろん凱旋門賞で、陣営ではフォア賞かバーデン大賞から本番に向かう意向のようです。オッズは5対1から6対1、評価はアル・カジーム、オルフェーヴルと並ぶ水準にまで上がってきました。
ヴォーラー厩舎に限らず、ドイツ馬は年齢を重ねるほどに、また距離が延びるほどに力を伸ばしてくるのが伝統。この時点でキングジョージをレコード勝ちしたノーヴェリストこそ、今年の凱旋門賞の目玉になってくるのではないでしょうか。

土曜日のアスコットはプリンセス・マーガレット・ステークス Princess Margaret S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)も行われています。10頭立ての1番人気(15対8)は、ロイヤル・アスコットのノーフォーク・ステークス(GⅢ)で3着のウインド・ファイア Wind Fire 。
しかし結果は波乱で、優勝は8番人気(25対1)と軽視されていたプリンセス・ノア Princess Noor 、2着クイーン・カトリーヌ Queen Catrine に2馬身差を付けていました。3着は4分の3馬身差でアロング・アゲン Along Again が入り、ウインド・ファイアは後方待機も伸びず5着敗退。
ロジャー・ヴァリアン厩舎、アンドレア・アズテニ騎乗のプリンセス・ノアは、ケンプトンで新馬勝ちしたあとロイヤル・アスコット(アルバニー・ステークスGⅢ)は9着、ニューマーケットのチェリー・ヒントン(GⅢ)でも5着と奮わず、人気の盲点になっていました。今回はブリンカーが功を奏した由。この勝利で1000ギニーのオッズ、20対1が出されています。

この日はヨーク競馬場でもパターン・レースが一鞍、ヨーク・ステークス York S (GⅡ、3歳上、1マイル2ハロン88ヤード)が行われました。 good to firm の馬場に6頭立て。
今期初戦にブリガディア・ジェラード・ステークス(GⅢ)に勝ち、プリンス・オブ・ウェールズ・ステークス、エクリプス・ステークスと2戦続けてGⅠに挑戦し、運悪くアル・カジーム Al Kazeem と対戦したために夫々2・3着に惜敗していたムカードラム Mukhadram が4対9の断然1番人気。

この人気に逃げ切り勝ちで応えたムカードラム、2着グランダー Grandeur に4分の3馬身、3着ヴィグモア・ホール Wigmore Hall には更に4馬身差を付けていました。
ウイリアム・ハッガス厩舎の4歳馬、鞍上ポール・ハナガンはキングジョージ騎乗を断ってこちらに乗ってきただけに、万全を期しての勝利だったと言えるでしょう。

さて昨日はフランスの夏競馬、ドーヴィル競馬場が開幕。G戦第一弾としてプシケ賞 Prix de Psyche (GⅢ、3歳牝、2000メートル)が行われました。馬場は good to soft 、6頭立て。クラシックで健闘してきたタサデイ Tasaday が4対5の1番人気に支持されていました。

ここでは力が違うと言わんばかり、タサデイは逃げ切って期待に応えます。2馬身半差でスパークリング・ビーム Sparkling Beam が2着、更に半馬身でアラムナ Alumna 3着。
アンドレ・ファーブル厩舎、最近メキメキ腕を上げているピエール=シャルル・ブードー(今期4度目のG戦勝利)騎乗のタサデイは、仏1000ギニー3着、仏オークス4着とムラなく好走。去年はここドーヴィルのレゼルヴォアール賞(GⅢ)を含め3戦無敗だった縁起の良いコースで、これを切っ掛けに更に上のクラスを目指したいところでしょう。


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